Commentary

2023 / 11 / 10

 

血管年齢(腎臓他)が寿命を決める

 


血管年齢は、血管の老化の進行具合を意味する言葉として知られています。血管は、加齢によって老化現象が進行すると、血管の壁が老化して硬くて脆い状態になり、血液の流れも悪くなってしまいます。血管年齢の老化が進む原因は、加齢だけでは無く、偏食や運動不足、喫煙などの影響で、実年齢以上に老化が進んで血管年齢が高くなる事が知られています。実年齢が若い人でも、血管年齢が高いと高血圧症・糖尿病・脂質異常症等の生活習慣病、その他の病気を発症するリスクが高くなります。血管年齢は健康寿命や老化速度を左右する重要な要素となります。

今から100年以上前に「人は血管とともに老いる」と言った医学教育の基礎を築いた米国の内科医師ウィリアム・オスラー/William Osler M.C. 1849~1919年は有名です。これは、日本の日野原重明医師も座右の銘として、患者や自分自身の健康管理の基本的な指標として重視していたと言われています。実際、加齢とともに血管は老化します。現代は欧米型の食事や運動不足などの生活習慣によって、日本では血管の老化スピードは速くなり、実年齢より10~20歳も高い血管年齢の人が増えています。

血管の働きは血液をスムーズに流し、全身に酸素と栄養をめぐらせることです。若い血管はしなやかですが、老化すると弾力を失って硬くなります。すると、血流が悪くなり肌や髪のトラブル、肩こりや腰痛、冷えなどの不調が現れます。それ以上に怖いのは、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など、いわゆる「血管病」のリスクが高く血管は多くの人にとって「健康」である事が当然と考えられています。例えば、自分の住居の水道や下水管、ガス管等がボロボロであれば…生活水準の云々の前に住むことそれ自体が多筋あリスクになります。血管は、全身に張り巡らされていて、動脈・静脈・毛細血管を1本にすると地球2周半の距離に相当すると言われています。全身の血流は、健康(正常)であれば20~30秒で循環すると言われていますが、これは細胞への栄養供給以上に酸素の供給が不可欠だからです。血液を全身に送り、生命維持に必須の役割を果たしている血管ですが、その重要性・役割を日頃考える事は殆どありません。血管は内腔を覆う血管内皮細胞と、その周囲を取り囲む壁細胞から構成されています。動脈はより丈夫な構造をしていますし、静脈は逆流を防ぐ仕組みがあったりしますが、特に、血管内皮細胞は重要な共通パーツです。

血管内皮細胞は血管の構成要素となるだけでなく、血液と組織が酸素や栄養素などの物質交換を行う場として働き、様々な生理活性物質を産生して組織や臓器の機能を維持する重要な働きを担っています。遺伝的な影響も30%前後あると言われていますが、個人差があります。最近の研究で、血管内皮細胞が、3段階に階層化されている事や幹細胞が再生更新に関係している事が動物実験で確認されています。血管内皮細胞は、体内の血流が速くなると、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を産生して放出すると言われています。一酸化窒素は中膜にある平滑筋に作用して、その結果、平滑筋の緊張がゆるんで血管が広がる事が知られています。血管の弾力性は、動脈や静脈、毛細血管の健康度により変わりますが、一酸化窒素の量に左右される事が確認されています。一酸化窒素が不足すると血管は硬くなり、逆に十分であれば血管を柔らかい健康な状態に保つことができると考えられています。

血管の重要性を考える上で1つの例を示します。過去、新型コロナの世界的感染拡大(パンデミック)は、2020年2月~3月の段階で、世界の医療関係者やウィルス学者や免疫学者・遺伝学者・生命科学の研究者を驚愕させました。新型コロナ/SARS-Cov-2が、肺炎だけでは無く、脳梗塞・心筋梗塞・多臓器不全等あらゆる症状を示したからです。日本のメディアでも味覚や嗅覚異常が、その特異な症状として人により発症する事が報告される様になりました。世界中の多くの研究者が、何故?その理由の解明に全力を注ぎました。その中で、極く初期段階で、過去の論文からその1つの回答(仮説)をした医師・医学者(先生)が、米国西海岸にいました。私個人も色々と調べる中でその仮説に驚きましたが、ここで簡単に紹介しておきます。また、その後、英国や日本でも重症化メカニズムや変異株の侵入経路を研究する発表が次々とありましたが、早い段階で血栓症であるメカニズムを提示していたのは驚きでした。簡単ではありますが、血管内皮細胞に関係する話で、癌や生活習慣病、その他の病気や健康に関係する話ですので、シェアさせて頂きますので、皆様の健康管理や改善・増進に役立てて下さい。

新型コロナ Covid19/SARS-CoV-2の人間の細胞への侵入経路は、表面に膨大にあるスパイク蛋白質(糖鎖)が細胞に結合して侵入する事はある程度予想されていましたが、Roger Seheult医師・先制/MDは、体内のアンジオテンシンIIの量により、アンジオテンシン受容体ブロッカーが上手くガードする場合と重症化リスクを逆にUPさせてしまう仮説を立てています。特に、血管内皮細胞が、侵入したウィルスにより活性酸素/ラジカルを増加させてこの修復をする場合に人により血栓が作られて血管の先の細胞や臓器が壊死する事で様々な症状が見られるとしています。これは、当時、高血圧症の患者や糖尿病患者等の基礎疾患者の服用していた薬にARB/アンジオテンシンII受容体ブロッカー(阻害薬)が、有効or逆に重症化している違いを良く説明しています。現在は、新型コロナと言えば、血栓症を起こす感染症としてそのメカニズムもある程度解明された感じがありますが、当時は大きな謎でした。ご存知かも知れませんが、血栓は、フォン・ヴィレブランド因子(vWF/von Willebrand Factor)と呼ばれる創傷部位に集まってくる血小板と止血のために重要な役割を果たす非常に大きな分子量の血液タンパク質によりその生成され易さが変化します。実際に、その後、NEJM誌/The New England Journal of Medicine(200年以上の歴史を持つ世界で最も権威ある週刊総合医学雑誌の一つ)にも掲載されましたが、ゲノム解析により3番染色体SNP/ABO型による重症化リスクと12番染色体による重症化抑制が、当時の新型コロナウィルスによる被害が日本人・アジア人に低かった理由として考察されています。また、血液型A型・AB型が、O型に比較して8%以上リスクが高い理由を良く説明しています。(当時、白人より黒人の犠牲が多い理由の説明にも合致します。科学的な根拠が示された画期的な進歩です。)

勿論、日本のメディアや専門の研究者の間でもコロナウィルスによる感染を長期間受けていた日本人・アジア人は、交差免疫によりその被害が比較的少ないという推定もされていました。これは、IgMやIgGの抗体の出現パターンを良く説明していて、ある程度根拠のある仮説とされていました。

図1 新型コロナCovid-19/SARS-CoV-2 感染と体内ダメージ

新型コロナの変異株の問題は、mRNAワクチンがそのターゲットに対して(細胞への侵入経路)設計されていて、変異株の変異の状況や侵入経路の変化に対しては必ずしも万能では無いという事実です。また、副反応や後遺症の問題もあります。NHKでもNEWSとして紹介されましたが、新型コロナワクチン接種後に死亡して一時金を申請している人が2千人以上いますが、支払いが確定したのは150人程度です。多くの場合は、死亡に至るケースは少ないとされていますが、米国の専門家によれば、因果関係は明確では無いものの5~6倍以上のアメリカでの死者がその影響によるのではと予想されています。(約30万人?)

従来のデルタ株に対して、オミクロン株(変異)の中和抗体感受性が変化して、ワクチン接種がその種類により有効では無いという研究報告が「Nature」オンライン版(AMED研究助成)に掲載されています。
実際、WHOでも2回以上のワクチン接種は、必ずしも全ての人に必要だという訳では無いという事が言われ始めています。(図2)ワクチンを接種すれば、重症化は防げるし集団免疫により社会全体としては有利であるという意見もありますが、マウスの動物実験では、ワクチン接種頻度7回で生き残ったマウスは0匹という報告もあります。これは、ゲノムが同一である可能性もあり、統計量としては少なすぎるという批判もあります。今後、ある程度の時間を使って、日本人を中心にその真偽が、確認されるかも知れません。(ファイザー社は、動物実験を通して、ワクチン接種により感染拡大が防げるという報告は、過去一度もしていないとEU議会の場で証言しています。実際、ワクチンを接種したマウスが、スーパースプレッダーとして感染拡大を引き起こす可能性の1つとしてのレポートもあります。)

図2 新型コロナ/SARS-CoV-2 オミクロン株による中和抗体回避と感染指向性の変化

参考情報:
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 10
DOI: 10.1038/ndigest.2021.211018  (翻訳:三枝 小夜子氏)
新型コロナウイルスが細胞に侵入する仕組み

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