Commentary

2024 / 1 / 9

 

ストレスと疾患リスク・健康寿命

 


男性と女性は、健康・生命についても本来は平等であるとの期待はありますが、生物学的には女性の方が男性より有利な場合が数多くあります。

例えば、色覚については、X染色体の一部にその遺伝情報があり、女性はXX染色体・男性はXY染色体である事から、ある統計データによれば、先天性の色覚異常は、日本人男性の5パーセント、女性の0.2パーセントという統計データがあり不平等とも言えます。女性は、XX染色体が2つあり両親からそれぞれ2つを引き受ける事で、異常の確率が低い結果となっています。そして、色については「有彩色」と「無彩色」に分かれますが、有彩色は色相・明度・彩度の要素で構成されていますが、明確な差が存在します。ある研究論文によれば、個体差はありますが、色彩認識能力では、男性が識別できる色数は7色、女性が識別できる色数は29色と言われています。女性の色彩認識能力が高いとされる理由は、女性が出産後乳児を健康に育てる為に子供の顔の表情から健康状態を容易に分析可能なように発達したのでは無いか?という専門家もいます。網膜/retina は、5種類の神経細胞 (視細胞・双極細胞・水平細胞・アマクリン細胞・神経節細胞) が層状に配列する膜状の神経組織である事が知られています。そして、視細胞はその形態から杆体/rod) と錐体/cone と呼ばれる 2種類に分類されて、杆体は弱い光に反応し、光の強度に応じて暗所では杆体が機能し、一方で明所では錐体が主に機能すると考えられています。

女性の色彩認識能力は、錐体を構成する3種類のS・M・L錐体(青系・緑系・赤系反応)の感度よりも脳内部の色彩情報処理に差があるのではという推測もあります。社会的には、男女平等という公平さは大切ですが、それ以上に生物学的な差が大きい事を知り補完的な役割分担を考えるのも必要かも知れません。繊細な色感覚を持つ人は、微妙な濃淡さを区別して100万色を識別可能とも言われています。

色彩認識能力の男女差は、健康維持や恒常性維持に貢献するホルモンバランスにも影響があるという事が示唆されています。例えば、近年の研究で、ストレス反応神経内分泌システムとしては、脳内の視床下部~下垂体~副腎皮質(APA)系が注目されています。HPA系は、免疫機能・交感神経/副腎髄質SAS・心臓血管系・感情・認知機能等のホメオスタシスと必要とされる制御に関係していると考えられていますが、多くの研究では、唾液中のコルチゾール/cortisol量のUP/DOWNをその指標とされる例が多くあり、男性が他人との競争や知的優劣の課題でストレスが増加するのに対して、女性は社会的拒絶(仲間外れ)に大きな影響を受ける事が報告されています。ストレス耐性は、その要因の種類にもよりますが、男性に比較して2~3倍高いとされています。親しい人の存在や安心出来るペット等の存在は、ストレスに対しても有効であり睡眠の質をUPするとされています。ストレスの多い人は、免疫力低下や疾患リスクUP、健康寿命が短いという統計があります。実際、世界各国の統計データでは、女性の平均寿命が男性より長いのが一般的です。(勿論、男女のストレス反応差は無いと主張する専門家もいます。)

副腎は、2つの左右の腎臓の上にある5g程度のピラミッド型の小さな臓器ですが、50種類以上のホルモンを産生・分泌していて非常に重要な臓器です。

腎臓は、ステロイドホルモン(コルチゾール、アルドステロン、性ホルモンなど)を分泌することで、栄養素の代謝、電解質のバランス調整、ストレスのコントロール、心臓や血管の循環器系の調節等健康や生命維持に重要な役割を果たしています。

また、エネルギー産生に関しては、炭水化物代謝、血糖コントロール、タンパク質・脂質から糖新生に貢献します。健康上の問題としては、強いストレスや長期化により、副腎でのコルチゾール産生量が増加するとエネルギーやリソースの多くがこれに使用される事になり、慢性疲労の原因になったりします。これは、体内での炎症反応を長期化させて、免疫力を低下させる問題となります。その結果、癌化や感染症、生活習慣病等の疾患リスクをUPさせる事になると言われています。

運動時心拍数は、運動強度(負荷)により上昇しますが、過去、 この時体内で産生される乳酸は悪玉物質として教科書で解説されていましたが、現在の研究では、寧ろ運動負荷UPに対して必要なエネルギー産生の善玉物質として記載されています。

運動生理学の説明によれば、激しい運動時は無酸素状態になり、ブドウ糖をエネルギー源とする嫌気性代謝が活発になり乳酸が産生されると言われています。ラニング等の有酸素運動から無酸素運動へ移行する境界ゾーンをAT(Anaerobic Threshold 無酸素性作業閾値)or LT(Lactate Threshold:乳酸性閾値)と言って、運動科学ではこの分野での研究が進んでいます。AT値については、前段のパラグラフの図を参照して下さい。自覚運動強度のイメージとしては、ややキツイ~少しキツイ(キツイの一歩手前)のゾーン(運動強度40~60%)が、ダイエットや健康UPには至適運動強度(最適)とされています。

ストレスや疲労の低減は、免疫力UPに貢献しますし、疾患リスクを低下させながら健康寿命を延ばす事が期待できます。ストレスは、心・精神面の反応として悲しみ、憂鬱感・落胆・不安感・驚愕・イライラ感・緊張感・無力感・無気力・絶望感を起こして、個体差はありますが生理的な反応を示します。

ストレス時に、人の体内ではコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが副腎皮質により量産されます。コルチゾールは、ストレスがあまり無い日常でも早朝時にはその産生が開始される事が知られています。交感神経を刺激して、体の緊張状態を保ち、脈拍や血圧を上昇させて、脳を覚醒させる事で良いスタートを容易にします。筋肉中のタンパク質をアミノ酸に分解し、肝臓でブドウ糖に合成して、血糖値をUPさせる糖新生を実行します。また、糖新生と並行して脳以外の場所でもエネルギー不足にならないように、脂肪を分解してエネルギー供給を支援します。人体の防御として、体内に入った細菌やウィルス・異物を排除する為に免疫機能が働くと熱や腫れなどの炎症反応を引き起こします。この反応を抑制する目的で、コルチゾールが分泌され、炎症反応や免疫機能をある程度抑制します。しかし、慢性炎症反応が長期化すると過剰に分泌されて副腎疲労から必要なタイミングでの分泌が維持出来なくなり、やがてストレスへの対応が崩れて行くと考えられています。その結果、免疫機能も低下して、癌細胞の破壊や抑制が困難とり、癌以外の疾患抑制も困難となり健康状態が悪化する事になると考えられています。基本的には、生活習慣を見直して、ストレス要因を除外する行動が大切です。ビタミンCやBを接種すると同時に質の高い睡眠を確保する事が大切と言われています。朝の時間帯に太陽光を浴びて、食事や運動・読書や音楽のルーチンを上手にバランスさせて、その時間をある程度揃えると良いと言われています。食事は、夕食を軽めに済ませて、入浴と照明を落としてリラックスして就寝すると良いとされています。可能であれば、22~2時の時間帯には就寝していると質を上げられると言う専門家もいます。(個人差はあります)

糖の必要以上の摂取は、健康阻害要因ですが、ストレス緩和に必要となる質の高い睡眠はメラトニンとの相関があると言われています。メラトニンは、セロトニンから変換されますが、その材料にはトリプトファンが必要と言われています。これを脳へ移送するのにインスリンが支援すると推定されています。必要最小限の糖の摂取は、不安感やイライラを抑制して精神状態を改善すると考えられています。

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