血液中の脂質の移送には、長鎖脂肪酸がアルブミンと結合する形で実行されます。中鎖・短鎖脂肪酸は、親水性が高い事から、血漿中に溶解します。長鎖脂肪酸は、疎水性である事から、脂肪・リン脂質・コレステロール+そのエステル・脂溶性ビタミンは、水溶性リポタンパク複合体として、血液中を輸送される事になります。
コレステロールは、(粒子数, 粒子直径nm,サブクラス)で分類するとCM/カイロミクロン(1, 90>, CM)・VLDL(3~5, 64.0~44.5, L)VLDL(6, 36.8, M)VLDL(7, 31.3, S)・LDL(8, 28.6, L)LDL(9, 25.5, M)LDL(10, 23.0, S)LDL(11~13, 20.7~16.7, VS)・HDL(14~15, 15.0~13.5, VL)HDL(16, 12.1, L)HDL(17, 10.9, M)HDL(18, 9.8, S)HDL(19~20, 8.8~7.6, VS)の4系統に分類されますが、HDL-C(VL, L, M, S, VS)は、組織からコレステロールをとり出し肝臓に運ぶ事から善玉として知られています。LDL-C(L, M, S, VS)は、基本的に細胞内に取り込まれてホルモン産生や細胞膜の形成に貢献するのですが、血中に過剰に存在する場合、血管壁に沈着・蓄積して血管壁(内部)で炎症反応を起こして血管内皮細胞を傷つけて動脈硬化を誘発させて、心筋梗塞や脳梗塞を誘引する事が知られています。その事もあり、LDLコレステロールは、悪玉と呼ばれています。
それぞれの密度 g/dLは、CM: ~0.94 g/mL, VLDL: ~1.006 g/mL, LDL: 1.019 - 1.063 g/mL, HDL: 1.063 - 1.21 g/mLとあります。また、VLDLやCMが加水分解される過程の中間密度リポタンパク質IDLと呼ばれるレムナントが血中に鬱滞残留する人もいると言われています。(Wikipediaより) 最近の米国の疫学調査MRFIT (multi risk factor intervention)では、コレステロール値は高過ぎても低過ぎても寿命を短縮するという従来の予想に反する結果を報告しています。血中の総コレステロールTCが、200 mg/dL以上では冠動脈疾患による死亡率が急速に増大し、180 mg/dL以下では冠動脈疾患による死亡率は低減せずに略一定になる事が判明しています。
これは、欧州や他の地域の疫学結果の調査と一致しています。日本の疫学調査としては、1986年度~1989年度迄の福井市で行われた26,000人を対象に住民検診の結果が知られています。当時、福井保健所長の白崎昭一郎医師が纏めた結果、男性ではコレステロール値が低い人程ガンなどで死亡した人が多く、女性でもコレステロール値が低い群の死亡率が高い結果を示しています。TC値が、160mg/dL以下の場合、肝臓癌との相関が高いとのデータがあります。胃癌については、男性は相関がありそうですが、女性には認められませんでした。大腸がんや進行がんの進展にともなって、総コレステロール値が低下する現象は、以前から報告されています。(追記:昭和大学医学部の平野勉教授の研究グループらは、真の悪玉コレステロールは「小型LDLコレステロール」と報告しています。➔酸化LDL/内因性➔アテローム)
国立研究法人 国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」より、肥満指数(BMI)と死亡リスクのグラフ(図)がありましたので、簡単にご紹介します。これは、過去にも同様なBMI値と死者数、死因の傾向を示したもので、癌に関しては、がん研究センターのデータとして示している様です。BMIは、体格指数とも訳されますが、実際、肥満では無く虚弱側にある場合でも死亡リスクや癌化・その他の疾患リスクは高い傾向を示します。死亡数(男性16万人・女性19万人)のそれぞれハザード比をBMI 23.0~25.0を1として基準としています。(統計的補正を実施)
血液データの栄養状態を示すアルブミン値が、BMI値20を切ると3.5g/dL(低栄養状態)を示すケースが多くなります。若い女性の場合は、特にその傾向が強くなります。 また、最近は、妊娠してもBMI値を気にする女性もいて、胎児環境として問題では?と警鐘を鳴らす専門医もいます。BMI値が、理想とされる22.0~23.9を外れると徐々にリスクが上昇する傾向を示しています。高齢の成人では、24.0~25.9の方が健康長寿を示すデータもあり、年齢のZoneによりやや理想値は変化する可能性があります。(女性の癌統計では、BMI値30.0を超えるとリスクが優位に上昇するとしています。)
BMI値は、健康を示す1つのインデックスとして有効ですが、他の重要な項目も併せてチェックする事をお勧めします。
同様に、下記の図は、癌の部位別の死亡者数(男性・女性)の年次推移を示す。「人口動態統計がん死亡データ」より国立がん研究センターが作成した図となります。
図を見ると、癌による死亡者数は、顕著に増加傾向を示しています。平成12年(西暦 2000年)に、日本肺癌学会では、「禁煙宣言」(禁煙プロジェクト)をスタートしました。2020年時点での喫煙率は、17.8%(男性: 29.0%, 女性: 8.1%)と圧倒的に低下しています。世界的にも傾向としては似ていますが、肺癌やその他の癌も減少には至っていません。免疫システムの低下は、色々な要因があり単純ではありませんが、専門家の中で、癌化リスクを徹底的に排除すると体内での免疫システムの低下を招く可能性も否定出来ない。その専門家は、多くの癌研究者やMDからの顰蹙を買いながら20年以上前に免疫系の低下懸念と癌死亡者数の増加を予言して書籍等も出版しています。一人一人が、健康習慣を身に着けるしかありませんが、多角的に考える習慣は必要かも知れません。
資料:「国立がん研究センターがん情報サービス」 (癌登録・癌統計 2019)