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2024 / 11 / 13

 

糖尿病リスク(1つの例)

 


生活習慣病には、糖尿病以外にも脂質異常症や高血圧症、米国では癌もその1つになっています。少し、糖尿病と可視化技術についてシェアさせて頂ければと思います。体内の血糖値コントロールが上手く機能せずに、体内の血糖値やHbA1cの値が、高値を継続する状態を「糖尿病」と呼びます。日本の統計では、1型糖尿病の患者数は10~14万人(12~16万人 → インスリン分泌低値者含む)、2型糖尿病95%の患者数を入れると1,870万人になります。(2020年 糖尿病予備群/疑わしい人を入れた数値)

糖尿病は、直接的な死因にはならない事が多く、重篤化しなければ生活に困る事が少ない事もあり軽く考えられる傾向にありますが、合併症や健康状態悪化(血管・他の臓器)が進行すれば、最悪の場合は「死に至る病」への入り口 or 途中過程と考えるべきです。

糖尿病合併症(過去減少傾向)

以下、 1万人中/全体数 → 2,000倍 実際の数字 例:60件 → 12万件(1万人/件)となります。

  • 心筋梗塞 148件/1990年 → 60件/2010年
  • 脳卒中 119件/1990年 → 57件/2010年
  • 足切断 66件/1990年 → 32件/2010年
  • 腎不全末期 34件/1990年 → 10件/2010年
  • 高血糖死亡 5件/1990年 → 3件/2010年

糖尿病網膜症は、1,000~3,500人規模で、それぞれ緑内障 28.6%・網膜色素変性症14.0%・糖尿病網膜症12.8%・黄斑変性症 8.0%・その他36.6%と減少傾向を示していて多くはありませんが、糖尿病に関係のある疾患としては気にする必要があります。 糖尿病腎症による透析患者は、20~39歳・40~64歳では減少傾向ですが、65歳以上では、やや減少~やや増加と加齢が進むにつれてその比率はやや増加を示しています。糖尿病腎症患者数は、16,247人/2010年~16,019人/2019年~14,330人/2022年と減少傾向にありますが、油断せずに注意する必要があります。 糖尿病を放置した場合の死因では、悪性新生物/癌 38.3%・感染症 17.0%・脳血管疾患 6.6%・虚血性心疾患 4.8%・腎障害 3.5%・その他 29.8%となります。1971~1980年の統計に比較して、この数値(2001~2010年)は癌と感染症による死因が20.8%増えている事を示しています。

糖尿病リスクと健康度・疾患リスクGr.

  • Gr.0 ~ Gr.2 現在の生活習慣良好ですので継続してOKです
  • Gr.3 ~ Gr.4 疾患リスクヒートマップの赤セルを徐々に改善して下さい
  • Gr.5 ~ Gr.6 疾患リスクヒートマップの赤セルの重点的改善が大切です
  • Gr.7 ~ Gr.9 疾患リスクヒートマップの赤セルの優先的改善を急いで下さい

糖尿病の症状・傾向(初期~重症化)

  • 喉の渇き・多飲・多尿・倦怠感・体重減少・足or爪の白癬症・足の潰瘍or壊疽
  • 視力低下or異常・手足の痺れ・腎機能低下・毛細血管の劣化・動脈硬化
  • 食事の栄養バランス不良・糖の摂取多い・肥満気味 or 痩せ気味
  • 筋肉量の低下・食事不規則・偏食傾向・アルコール多飲・高血圧気味
  • 歯周病リスク・認知症MCIリスク・癌化リスクのUP

専門家や研究者によれば、生体の恒常性維持or健康体実現に血管内皮機能は非常に重要と考えられています。特に血管内皮細胞で産生される一酸化窒素Nitric Oxide(NO)は、血管の緊張を制御して抗動脈硬化に貢献する事が知られています。2型糖尿病は、血管内皮機能障害を起こす代表的な疾患の1つとして知られ、全身の色々な血管障害と関係して、これが進行すると全身の色々な臓器が障害されると言われています。2型糖尿病に合併する動脈硬化性疾患は、血管内皮機能障害から始まる慢性炎症性病態とされて,動脈硬化病変の初期変化として、血管内皮機能障害を放置する事は、非常に危険です。

一般的に2型糖尿病による血管内皮機能障害は、高血糖やインスリン抵抗性に伴う高インスリン血症、低血糖が要因と考えられています。特に食後の血糖値スパイクや高血糖、血糖変動に伴う酸化ストレスの上昇は、この悪化に関与していると言われています。食後の糖・脂質代謝異常により血管内皮機能障害は引き起こされる事から、食後の代謝異常を抑制し改善する治療が行われています。 日本の糖尿病治療では、多くの場合、血糖値を低下させるインスリンの分泌に注目した治療方針が殆どですが、最近の欧米の研究報告の中に、糖尿病が長期化するとインスリン抵抗性の問題が起こる事を問題として、血糖値を上昇させるグルカゴン・成長ホルモン・コルチゾール・アドレナリン・甲状腺ホルモン等の異常が関係している可能性を指摘するものが見られる様になっています。遺伝的問題が明確な1型糖尿病の場合は、インスリンの分泌不良/膵臓のβ細胞機能不全が最大の問題かも知れませんが、2型糖尿病の場合は、糖尿病の治療を受けて生活習慣を改善する事が最優先になります。(食事・運動・睡眠その他)

新潟大学の日本全国の糖尿病専門施設に通院中の4万8千人の2型糖尿病患者を対象とした調査分析/糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の臨床データ分析では、「1%の人が寛解に成功」している様です。2023年5月8日、国際専門誌「Diabetes, Obesity and Metabolism(DOM)」に掲載されています。但し、一般的に糖尿病の治療期間が長くインスリン抵抗性が顕著な患者の場合は、「寛解の成功確率」は低くなる様です。

糖尿病に関する知識として、糖尿病の専門医の判断によりますが、空腹時血糖値 126mg/dL 以上 or 食事後2時間で200mg/dL を超える状態、また、HbA1c 6.5以上の場合は、治療が必要になる可能性があります。先程も触れましたが、日本では、インスリンの分泌に問題がある場合、糖尿病リスクが高まるとされていますが、米国の専門医は、糖尿病をインスリンの分泌不良という視点だけでは無く、成長ホルモン・副腎皮質ホルモン/コルチゾール or アルドステロン・副腎髄質ホルモン/カテコールアミン・甲状腺ホルモン・グルカゴン・ソマトスタチン等のコントロールが上手く機能しない場合等も考慮する必要があるという見解を述べています。例えば、副腎は、ストレスを多く受け続けると疲労して、その機能低下が起こります。

副腎は、左右の腎臓の上にあるピラミッド型をした臓器で、健康や生命維持に重要な50種類以上のホルモンを産生・分泌していますが、ストレスを中長期的に抱えた生活をしていると副腎疲労と呼ばれる病態を起こすリスクがあります。米国では、30年以上前から副腎疲労/アドレナル・ファティーグの病態が認識される様になり、ホルモンバランスの乱れ・慢性的疲労・精神不安・食欲不振・下痢・アレルギー症状等の様々な症状が問題とされて種々の検査方法や治療法が導入される様になりました。最近、日本でも問題視する医師が増えて、病院によっては、要因分析・検査からアドバイスや治療を受ける事が可能になりつつあります。

AxHELP 可視化技術の1つの例ですが、血液データやバイタルの各項目をマトリックスとして、偏差値化とその相関係数を考慮して青・緑・赤でグラデーション化してセルを色分け表示すると微妙なパターンとなります。この方は、「平均的Gr.5」よりは、「健康不安Gr.6」を疾患リスク側に外れて「やや悪化Gr.7」に位置します。年齢的には、丁度、高齢者領域に入った段階ですが、高血圧リスクLevel3・糖尿病リスクLevel4とそれ程悪く無い位置ですが、脂質異常症リスクLevel6ですので健康悪化が明確です。個人差はありますが、統計的には今後、糖尿病リスク・高血圧リスクが徐々に高くなり、悪化傾向を将来明確に示す様になる危険性があります。

勿論、一般的には、糖の摂取を控えれば、血液中の糖は低下する方向に働きます。但し、糖は炭水化物/必要栄養素が体内で変化して「糖」になりますので、単純では無く少し注意が必要です。また、糖質制限をやり過ぎて、糖の不足が長期的に継続してしまうと血管や腎臓・その他の臓器に悪影響を及ぼす事例が多く報告されています。管理栄養士や専門家からの指摘が良く知られていますが、糖を全く摂らない糖質制限を長期的に実践する事は、色々とデメリットがあります。日本人の1日に摂取すべき炭水化物の量は、男性 → 2,700~2,100kcal/day・女性 → 2,000~1,650kcal/day(18~75歳以上)が日本人の推定エネルギー必要量を基準として、50~65%を炭水化物から摂取する事が推奨されていますので、炭水化物のエネルギーが4kcal/g とされていますので、男性 → 263~439g/day・女性 → 206~325g/day がオフィスワークの人の1つの指標になります。(体格と日中の身体活動レベル・運動量により変化します)

糖質/グルコースは、脳の主要なエネルギー源となる栄養素ですので、長期的に糖質制限を進めた場合は脳にとってあまり良い状態と言えないケースが増えます。低血糖症・筋肉量の低下・便秘or下痢・睡眠の質低下・食物繊維不足による免疫力低下・ケトン体の増加と血液酸性化・嘔吐・水分量の不足等の症状が見られる様になり、痩せた状態からリバンドして太り易い脂肪体質になる等の指摘があり、栄養バランスが崩れて血管や臓器の劣化が報告されたりするケースもあります。有酸素運動を30~40 分間程度して、心拍数を120 ~140 bpm UP/DOWN させてインターバルトレーニングをすれば、体内の200~300kcal 相当の脂肪と糖が燃焼します。

YouTube では、視聴数を稼ぐ目的なのか?糖質制限や16 時間断食ビデオが多く人気ですが、これを長く続けると健康状態は悪化すると言う研究者や専門家の意見も少なくありません。90~100 歳を過ぎた人がこれを実践すれば、個体差の問題はあっても、数週間もすれば今迄健康だった体が弱って行く姿を見る事になるかも知れません。一日3回の食事で、必要カロリーや栄養バランスを上手く維持していた人が、1or2回でクリアする必要がある訳ですから特殊な環境と経済的な余裕が無いと相当難しい様に想像します。健康知識のある医師や管理栄養士でこれらの長期的な16時間断食の実践を勧める人は”0”だと思います。

HbA1c は、赤血球中にあるヘモグロビンHb が糖と結合している率%を示しています。この値は、過去1~2ヶ月(6 週間)の血糖値の平均値を反映していると言われています。ヘモグロビンHb の基準値は、男性14~18g/dl、女性12~16g/dl ですが、赤血球1個中に29.0~35.0 pg/10-121兆分の1の割合で存在すると言われています。赤血球の寿命は、120 日/4ヶ月程度と言われていて、Hb の量・質が高ければ心肺機能が有利であり健康体を実現する上でも1つの指標になります。酸素を運ぶ能力と関係しますので、体内でミトコンドリアがATP/エネルギーを生成するのにも大きく貢献します。脳は、動脈から20~25%の血液を受け取り、脳が活発に機能していれば、運ばれた酸素とATP の50%を消費しているという数値も知られています。

赤血球は、個人差はありますが、年齢・性別の以下の統計データがあります。男性は、女性よりやや赤血球数が平均的には多い傾向がありますが、加齢が進み70歳を超える段階になるとその差は大分小さくなります。勿論、赤血球中のHbを理想的な状態に維持するには、ストレスを少なくして、有酸素運動や睡眠の質をUPする事が大切ですが、鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)やビタミンB12・葉酸等の造血ビタミンの摂取も重要です。特にベジタリアンや動物性蛋白質を避けている人は、少しチェックが必要になります。女性は、月経等で男性より鉄分を失う傾向にあります。動物性蛋白質に含まれるヘム鉄に対して植物性食品に含まれる非ヘム鉄は吸収率が低いので多めの摂取が良いかも知れません。蛋白質や鉄分の吸収を高めるには、ビタミンC の摂取が推奨されています。

男性・女性に共通して、20~39歳にはあまり大きな変化はありませんが、40歳~徐々に加齢が進むにつれて赤血球数の減少が見られます。この現象は、生活習慣により大分違う変化となります。健康的な食習慣や質の良い睡眠・運動習慣が守られる場合、統計データより若い年齢のデータに近い数値となります。白血球・血小板も同じです。(老化度)

赤血球は、腎臓が正常であればエリスロポエチンEPOの指示を出して骨髄の造血幹細胞で産生されます。赤血球の寿命は、約120日間と言われています。正常な人の場合、全体の 0.8%/dayの割合で新しい赤血球に入れ替わっていると考えられています。骨髄の中での細胞分裂から赤血球以外にも白血球や血小板が産生されます。加齢により減少します。 糖尿病予備群/境界型は、生活習慣を改善すれば、正常に戻す事は不可能ではありませんが、1%程度の可能性という統計があります。実際、栄養バランスや有酸素運動・質の高い睡眠、ストレスの低減を上手に実践しないと疾患リスクや老化は、簡単に加速します。食事のヒントとして、牛乳は豆乳他とミックスしたりorビタミン・Mgを摂取したりしないと骨密度が低下するという研究者の報告もあります。(徐々に加齢が進むと…)

糖尿病と診断されたメンバーの方のHbA1cと生活習慣との相関を示した図が以下です。通院して薬による抑制はある程度可能と言われていますが、もし、病気からの寛解を目標とするのであれば、生活習慣の大幅改善をする事が「大切」だというお話を伺っています。勿論、ご存知の様に炭水化物や糖の摂取を徹底的に低減すれば、比較的短期間でHbA1cの基準値以内へのコントロールは可能かも知れませんが、健康体の維持と長寿という点では色々と問題がある事が知られています。スイーツ類を一切食べなければ、炭水化物の量を制限すれば1つの目標値はクリア出来るかも知れませんが、血管を含めた臓器類の修復や老化抑制は厳しいかも知れません。この方は、心拍数120~140 bpmのレンジで有酸素運動/ランニングを行いLDL-Cや中性脂肪の低下、糖の体内での燃焼を実践しています。寛解迄は、数ヶ月必要そうですが、成功率1%の壁はクリア出来る様子です。