Commentary

2024 / 6 / 21

 

日本人の高齢化・バイタル・脳 Part2

 


運動競技やスポーツ、オリンピックでは、優勝 or メダリストの差は、多くの人が当然の結果だと考えています。勿論、優勝・準優勝 or 金メダル・銀メダル・銅メダルの差は、その競技者やチームのレベルor試合コンディションにもよりますので、圧倒的な差がある場合と僅差の場合に分かれるかも知れません。結果的には、参加した競技者・選手の相対評価となります。しかし、野球の二刀流大谷翔平選手や女子サッカーの長谷川唯選手は、日本だけでは無く海外でも圧倒的なパフォーマンスor地球外から来ているのでは?と称賛する声が止みません。恐らく、遺伝だよとか運が良かっただけだよ…という声は殆どありません。その才能以上に、自分のいる競技環境に適応しようとしているし、その見えない努力を容易に想像可能だからです。

人間の多くは、色々な環境に十分に適応可能な生体構造を有しています。逆に言えば、老化や認知症MCIが問題になる人は、知らない間に「老化・認知症MCI」を加速させてしまっていて、それを受け入れる生活習慣や食事・運動をしない習慣に違和感が無くなってしまった結果とも言えます。例えば、BMI値が標準的な場合、年齢にもよりますが1kmの距離を5~6分間でランニング出来ないとすれば、心配機能は少し低いと考えるべきかも知れません。3~4分間/kmペースであれば、42.195Kmの距離の問題はありますが、市民マラソン入賞やオリンピックの道も夢では無いかも知れません。科学的には、血液のヘモグロビンHbや赤血球数が、基準値以内でも低い数値であれば、有酸素運動や無酸素運動が大幅に不足しているリスクを示唆しています。

下の図は、有酸素運動と心拍数との関係を示しています。多くの人は、ランニングすれば有酸素運動だと考え勝ちですが、心拍数Up/Downを考えた最適プランで無いと健康化への効果は期待出来ません。

詳細については、運動科学・スポーツトレーニングの専門家の情報をチェックして頂ければと思いますが、健康体をデザインする1つの指標として覚えておくと良いと思います。個人的な体験ですが、最初、早歩きやジョギングも苦手でやりたく無かったのですが、血液データを改善する必要がある事や他のメンバーの参考になるかと考えて1年間トライして分かった事があります。心肺機能は、加齢により低下傾向を示しますが、適度な科学的トレーニングによって数年前以上の自分の運動能力を超える結果を出す事は可能であるという事です。1~2 kmから3 ~5km程度のランニングに対して、 2023年5月頃9~10分間/kmペースで0.5~1.0km程度、インターバルトレーニングや時々LSD走を入れて6ヶ月程度すると7~8分間/kmペースで1.0~2.0 km程度、1年後2024年5月時点で 5~6分間/kmペースで2.0~3.0kmランニング可能となりました。フラットな場所であれば、季節や時間帯・天候により4~6分間/kmペース可ですが、UP/DOWNのあるランニングコースだと5~6分間/km程度になります。勿論、季節・時間帯(気温・湿度)やその日のコンディションにも左右されますが、体は、多くの場合、そのトレーニングに徐々に適応していく事を確認可能です。

勿論、有酸素運動の可能な範囲は加齢と共に低値になります。また、血液中のHb・赤血球数や体内33のミトコンドリア数or自律神経バランス・ストレス状態によっても日々大分変化します。年齢別の安静時心拍数の一分間の平均は、20歳代:男性74拍・女性78拍、40歳代:男性72拍・女性76拍、50歳代:男性71拍・女性74拍、60歳代:男性71拍・女性72 拍、70歳代:男性72拍・女性77拍となります。血液データの酸素供給とATP産生が良い人は、心拍数低値となります。

勿論、体内の筋肉量が低下しても、心拍数は低値となります。「サルコペニア」は、筋肉量や筋力の低下による身体機能の低下が特徴なのに対し、「フレイル」は、身体的な機能低下だけではなく、精神・心理的、社会的な衰弱や虚弱を含むと定義されています。また、筋肉量と筋力(質)の2つにも注意する必要があります。

握力や脚力低下に注意して腹筋・下肢筋・体幹筋+腸腰筋・下腿三頭筋/脹脛(腓腹筋・ヒラメ筋)の筋力や筋肉量を維持or増加させる事がポイントです。サルコペニアのセルフチェックの1つに、「指輪っかテスト(人差し指と親指をリングにして脹脛を囲む方法)」は、1つの指標になる様です。年齢と性別にもよりますが、BMI値が20~25kg/m2で丁度リング同じ程度であれば、サルコペニアのリスクは平均的であり、隙間がある場合はリスクが高く、リング以上に筋肉が太ければリスクは低いと判断されます。50~60歳を経過すると黙っていても蛋白質が不足すれば、本人の許可無く筋肉を分解して蛋白質を代用する構造であり筋力が低下してその量も減少します。これは、寝たきり状態の人(入院・介護)や宇宙飛行士等も運動負荷が無い状態になりますので、筋力・筋肉量・骨密度がある時間が経過すると低下した状態になります。人間の体は、良い意味でも悪い意味でも生活環境に適応しようとしますので、動く必要が無ければそれに適応してATP消費や産生量を減少させてエコ的な体内エネルギーセーブ状態に入ります。

ご存知の方も多いかも知れませんが、人間の脳は、出産後~乳児~幼児期とコミュニケーション機会や刺激を一切受けないと成長出来ずに死亡するという恐ろしい話があります。
神聖ローマ帝国の皇帝フリードリッヒ二世(1194~1250)は、人類の言語の起源を確かめたいと思って、一つの実験を行ったそうです。当時の修道院に無責任に捨てられていた捨て子に対して、人間の言葉を一切聞かずに育った子は、人類の根元語を話すに違いない、との期待から、皇帝は生まれたばかりで捨てられた赤ちゃんを何人か選んで、保母や看護婦に養育させる事にしたそうです。その時修道士にマスクをさせて、赤ちゃんが目を見ても一切目を見てはいけない、笑いかけても笑ってはいけない、語りかけてもいけないと、触れ合いを一切しないで赤ちゃんを育てる実験をしたそうです。赤ちゃんに話しかけたり、あやしたり、機嫌をとったり、愛撫したりしては絶対にいけないと厳命した結果、どうなったのか?入浴や食事など生命維持に必要な事は勿論許しましたが、人間的な接触を禁じた結果は、実験対象となった赤ちゃん達は、あまり大きくならない内に天に召されたと言われています。愛情や人間的出会いが無ければ、人間は生きることが出来ないというのが、現在の科学的な視点から言われている事です。生命維持や命を守る大切な脳のメカニズム(脳神経・ホルモン)が、乳幼児期に発達しない事が致命的になるという事です。
参考:https://jp.glico.com/boshi/futaba/no71/con05_05.htm    https://www.keio-up.co.jp/kup/kyouiku/zuihitsu/z201507.html

最近の研究により、筋肉や骨が運動機能に重要なだけでは無く、生命維持や健康にも重要な役割を持っている事が知られる様になりました。マイオカインとは、骨格筋(筋肉)から分泌されるホルモンやペプチドなどの物質の総称ですが、この20年間で、これ迄に数十種類のマイオカインが見つかっています。マイオカインは筋肉から分泌された後、筋肉自体に作用するものもありますが、血流に乗って全身に運ばれ、さまざまな臓器に対して良い影響を与えるものも多くあることが分かっています。筋肉を動かすことによって分泌される「運動誘発性」のマイオカインは、運動をする事で体内の様々な臓器に良い影響を齎す事で「健康」を促進します。マイオカインは、筋肉の代謝や増大、糖の取り込みを増やして血糖値を安定させる働きや血液を介して脂肪組織に到達し、蓄積した脂肪を燃焼させる働きもしています。また、脂肪細胞には、白色脂肪細胞(脂肪の取込み)と褐色脂肪細胞(脂肪燃焼)の2つが知られていますが、マイオカインは、白色脂肪細胞の「ベージュ化」を促進する事で、脂肪燃焼を助ける事が確認されています。

<筋肉に存在>

  • ミオスタチン:骨格筋細胞の増殖を抑えるたんぱく質。筋肉が異常に発達することでエネルギーを浪費する事を防ぐとされています。
  • カテプシンB:細胞内に蓄えられているたんぱく質分解酵素群の総称です。記憶力を高める可能性があると考えられています。
  • IL-6:感染や疾患に対する免疫系、血液系などの生体防御を活性化する重要な物質です。免疫細胞の暴走を抑えると考えられています。
  • SPARC:大腸がんの細胞の自然死を活性化させて、その発症を抑える可能性があるとされています。
  • Irisin:脳の神経細胞の新生・再生に欠かせないBDNF/Brain-Derived Neurotrophic Factor脳由来神経栄養因子と呼ばれる蛋白質の濃度を高め、脳の働きを促進するとされます。更に肥満や糖尿病の予防に役立つと考えられています。 IGF-1:アルツハイマー型認知症の原因となる物質のアミロイドβを減らすと考えられています。
  • MIF:骨格筋における糖の取り込みを抑制させると考えられています。

<脂肪に存在>

  • アディポネクチン:動脈硬化の進行を遅らせると考えられています。

人の骨は、206個の骨から構成されている事が知られています。骨の機能として良く知られているのは、「身体を支える・臓器を守る・カルシウムを蓄える・骨髄で血液成分を作る」4つがあります。人の骨の主要構成成分は、リンP:骨の50%超(体内のリンPの85%がカルシウムCaと結合し骨や歯を形成➔リン酸カルシウム/骨全体の75%)、コラーゲン:多細胞動物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分(骨全体の25%)から構成されている事が知られています。コラーゲンは、体内の30%程度を占めると言われていますが、その20%が骨・軟骨、40%が皮膚、その他が他の臓器・血管に分布していると予想されています。最近、「骨ホルモン」が健康に貢献する物質として存在が知られる様になりました。例えば、「オステオカルシン」と呼ばれる骨ホルモンは、生活習慣病の改善や脳の発育や発達等、多くの機能を持つ事が報告される展開になり、「若返りホルモン」として大きな注目を集めています。オステオカルシンは、骨を形成する骨芽細胞から分泌されるたんぱく質ですが、一部は血液に放出されて全身の臓器に影響を与え糖質や脂質の代謝に影響を及ぼすと言われています。骨密度向上には、日々タンパク質や、カルシウム(牛乳・乳製品、小魚)、ビタミンD(魚、干しシイタケ)、ビタミンK(納豆、ブロッコリー)、そして「MBP」等の骨密度を高める成分の摂取が重要だと思います。

女性の場合、閉経後、骨粗鬆症リスクが顕在化すると言われています。50歳後半の日本人女性約18%が骨粗鬆症と言われています。60歳代後半約34%、70歳代後半約49%の骨粗鬆症リスクが上昇して、骨折を経験する人が増加する事になります。日本の骨折リエゾンサービス/FLSは、加齢が進む場合に一度は参考程度に確認しておいて損の無い情報の様に思います。 http://www.josteo.com/ja/news/doc/200518_3.pdf

また、50~60歳を過ぎたあたりからチェックしておいた方が良い情報として、「健康長寿ネット」が専門家の情報として人気ですので参考にされると良いかと思います。そこでも紹介されていますが、高齢者の運動器障害と健康についての特集記事がありますので、将来の参考情報になるかと思います。 https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/pdf/Aging%26HealthNo.94_light.pdf

本来、男性より女性の方が寿命は6.1歳と長いのですが、健康寿命では男性より2.7歳の差と短いという結果です。この統計データ(平均寿命と健康寿命の差:男vs女)は、女性の方が、長寿の割には要介護リスクがやや高い事を示しています。但し、65歳以上の高齢者数は、3,627万人/2022年ですが、2000年の要介護・要支援認定割合11.6%から2022年19.0%と倍近く増加しています。男性の要介護原因は、脳血管疾患/脳卒中>認知症 > 高齢衰弱 ですが、女性の場合、認知症 > 骨折転倒 > 高齢衰弱の順となり、骨折転倒が第2位の原因になっています。女性の脳血管疾患は、第5位ですので、男性の脳血管疾患が異常に高い事が分かります。1951~1980年の死亡原因1位は、脳血管疾患でしたが、1981年~死亡原因1位は、癌になります。心疾患と脳血管疾患が、2位・3位となります。日本では、あまり知られていませんが、これらの上位の死因は、生活習慣を変える事で、ある程度、その疾患リスクを低減可能な事が分かっています。老化や認知症も同様です。

2016年のデータですが、女性の平均寿命と健康寿命の差は、12.3年となり要介護・要支援の必要のある期間が12年以上となりQoLや肉体的精神的な負担も含めて課題となっています。年間の一人当たりの医療費負担額は、35.9万円となっていますが、高知県47.1万円・鹿児島県44.0万円・長崎県43.4万円・徳島県43.3万円・大分県43.1万円・山口県42.2万円・佐賀県42.2万円・北海道41.9万円・熊本県41.7万円・香川県40.8万円・和歌山県40.6万円・福岡県39.9万円・大阪府39.2万円・秋田県39.0万円(39.0万円以上)が、日本の一人当たりの医療費負担が大きな糖道府県となります。人口の大きな東京都・神奈川県・愛知県・埼玉県・千葉県・兵庫県は、人口の多い割には、1人当たりの医療費と自治体の医療費負担も良く抑えられていて、健康な人が多い都県と言えます。

男女とも60~70歳を過ぎると図の様に骨粗鬆症に関係する骨折リスクが上昇します。肌肉量や骨量は、運動機能に関係するだけでは無く、健康維持にも大きな相関がある事が知られています。
「骨」は、正常ならば約120日間程度で入れ替わる事が知られています。「骨芽細胞」という骨を作る細胞が注目されていますが、間葉系幹細胞を起源とする20~30μm程度の細胞の出すホルモンに「オステオカルシンOC」や「オステオポンチンOPN」があります。これらの物質は、他の蛋白質やサイトカイン、ビタミンD or Eと連携して、腎臓・膵臓等の体内臓器とのネットワークを活性化させて破骨細胞の誘導をする事で、「骨」のリモデリング(骨の代謝)を実現すると同時に健康を維持する重要なホルモンを分泌している事が解明されています。特に、オステオポンチンは、骨髄に存在する「造血幹細胞」の機能を若く保ち、リンパ球へ分化する等して全身の免疫力を活性化する働きが知られています。

特に、女性の場合は、閉経後に女性ホルモンの低下が進行して、骨量の減少が男性よりも早く、骨粗鬆症の危険領域に60歳を超えたあたりから注意が必要とのデータがあります。女性は、男性より平均寿命が長いという生物学的な優位性がある反面、健康寿命では男性との差はあまり大きくありません。
骨が筋肉と連携し、運動機能を支えるという事以上に、生命維持や健康維持に重要な臓器とのネットワークを形成している点にも注意する必要があります。

日本の高齢化は、現状から大きく変化が無い場合、他の先進国が後を追う格好で先行する事が、統計から予測されます。80~90歳以上の要介護の人数は、増加すると同時に健康寿命は、あまり延びが期待出来ない事から社会全体のコストが、若い人達への負担を強いる格好になります。

日本の若い人達への意識調査では、自分の親を看るという意識は、多くあるという統計結果ですが、一方で介護施設や保険その他の支援が無ければ、急激に変化せざるを得ない様にも思います。勿論、高齢者は可能な限り、若い人達の負担を極力避ける方向で意識を変えると思いますが日本がその未来を上手く示せなければ、他の先進国も同じ問題に直面する事になります。

逆に、日本が安全で安心できるバランスのとれた社会を示せれば、他の先進国からそのモデルが良いロールモデルとして参考にされると思います。戦争反対のデモや意識は大切ですが、それ以上に日本が地獄絵図とならない努力は、本当に大切かと思います。

有酸素運動は、3~5回/週程度が良いとする専門家が多いと思います。図の様に、心拍数を意識したランニングと飽きないプログラムやメニューがポイントになります。自分に合うトレーニングを実践して効果を確認すると良いかも知れません。年齢にもよりますが、無理のない運動習慣を身に着けられれば、長期的に理想的な健康状態を維持可能な1つの要件をクリアした事になります。最近のスマートウォッチは、少し無理をすれば、GPSや心拍数測定の精度が高いものが手に入る様になりました。SPO2やVO2maxや睡眠時の呼吸数や心拍数・睡眠の質もチェック可能にです。少し、誤差がありますが、体組成計測も可能です。血圧測定は、一般家庭向けのものは手の届き易い価格帯になっています。

また、有酸素運動は、年齢の問題や目標・目的によりますが、参考情報をシェアしておきたいと思います。20~30歳のアスリートの方は、トレーニング方法論や専門書がありますので、そちらを参考にして頂ければと思います。健康化の為の運動強度は、運動が好きで自信のある方50%・運動不足気味の方40%・安静時心拍数80拍/分間or足腰の筋力低下が気になる方30%程度が推奨されています。以下の式の強度を参考にして、目標心拍数(運動時)をチェックして設定して下さい。

目標心拍数=(最大心拍数 - 安静時心拍数)×(強度÷100)+ 安静時心拍数

別の章で、有酸素運動のメニューを紹介しますので、運動習慣を身に着けて長く継続可能な様にして下さい。色々なサプリメントに頼って、運動をしない生活を送るよりも健康効果はあると思います。健康体実現にケトン体を維持している永野正史医師が、“何歳でも「体は鍛えれば若返る」のか?”について色々なデータを開示しています。最大心拍数については、「220-年齢」or「208-0.7×年齢」が計算式として良く知られています。THE GOLD ONLINEの中で、60~70%の負荷のトレーニングにより、最大心拍数が計算値163 or 168から実測値185へと若返った事が紹介されています。この数値は、スポーツメーカのラボで「エルゴメーター検査」を行って得たという話です。
https://gentosha-go.com/articles/-/25809

余談ですが、スウェーデンでの研究「高齢者における安静時脈拍と認知機能低下・認知症との関連」では、認知症患者の安静時心拍数に関する傾向として、①安静時脈拍数が80拍/分間以上の場合、60~69拍/分間の場合に比べて認知症の相対的リスクが1.55倍(ハザード比)を示している事、②80拍/分間以上の脈拍の場合、認知能力の尺度とされるMMSEの点数で0.13と認知機能の低下との相関があったと報告されています。つまり、定期的な脈圧のチェックは、加齢と老化・認知症MCI等のリスクを確認する上で1つの参考になる可能性があります。

多くの人は、「脈圧」という言葉を耳にしてもその意味を考えたりする事は無いかも知れません。脈圧は、収縮期血圧/最高血圧Hと拡張期血圧/最低血圧Lの差として簡単に計算されます。一般論ですが、柔軟な動脈ならば最高血圧は低く最低血圧は高くなり、結果的に脈圧は小さくなります。

例えば、動脈硬化のない若年者の一般的血圧は110/80の様に、脈圧も小さくなります。しかし、若年者が高血圧になると収縮期より先に拡張期血圧が140/90の様に高血圧の基準に達します。動脈硬化が進行すると血管の弾力性が低下していますので、収縮期に心臓から血液が送り込まれて、血圧が上昇しても簡単に血管は拡張できず、血圧は上昇します。また、心臓の拡張期に血液は末梢に流れ去り血管の中が余裕となっても、血管は収縮しない現象が起こります。この場合、最低血圧は、どんどん低下していきます。動脈硬化の目立つ高齢者の場合、一般的な血圧値は135/65・脈圧70と大きな数値を示します。勿論、心臓に問題のある場合は、若い人であっても脈圧が理想値から外れる事もあり注意が必要です。気になる場合は、後回しにせず早めに専門医に相談する事が大切です。
https://www.takamatsu-medical.com/original17.html